Time is life

毎日笑って過ごします^^

本が売れない時代の本

母に「もう読んだから持って行っていいわよ」と言われた本です。
推理作家の山村美紗氏についてのノンフィクションですが、一方で「本が売れない」時代を生きる著者自身の話でもあると感じました。


京都に女王と呼ばれた作家がいた 山村美紗とふたりの男 (幻冬舎文庫)
京都に女王と呼ばれた作家がいた 山村美紗とふたりの男 (幻冬舎文庫)
幻冬舎
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自身が物語のヒロインのように豪邸に住み、華やかで美しかった山村氏。
夫がいながら、同じ推理作家の西村京太郎氏と隣同士に居を構え、毎年何冊もの作品を発表し続け、公開されていた長者番付では常に上位に名前があがる。
出版界が隆盛を誇っていた時代に輝いていたまさに「女王」と呼べる存在。


山村氏がこの世を去った年がくしくも本の最高売上金額を記録した年となり、翌年から売り上げ部数、販売部数も減少の一途を続け、今やピーク時の半分程度という時代に。
著者をはじめとする作家たちはその「出版不況」の時代を生き、喘いでいます。


読書の楽しみとは何でしょう。
自分とは違う世界、人物、人生を生きられること。
自分とは違う思想に触れられること。
自分が生きていない時代、世界にはばたいていけること。


そのどれもが、今や活字でない方法で得ることができます。
それも本を読むよりもずっと手軽に。
しかも世の中、断捨離、ミニマリストブーム。
スペースをとる紙の本は買うよりも借りたり、電子で賄う人たちが増えました。
電子書籍の印税は紙の本に比べると微々たるものだそうです。
レンタルものや中古で売買されるものは作者に印税が支払われません。


経済界のトップの人たちが「本は読むよりも聞く方ことの方が多くなった。移動中でも運動中でも1、2冊クリアできる」と発信します。
文学好きで、大学も日本文学を選んだ娘Aですら紙の本をほぼ購入しません。
「読み始めれば面白いんだけど、本は読むまでに一段高いハードルがあるんだよね」と。


私たち昭和の世代がいなくなるころには、紙の本の需要はもっと減っていくでしょう。
ネットが広まり、自分もですが、こうしてブログなどを書く「総書き手時代」。
自分の世界を作品にまで昇華し、芸術の域にまで高められる作家さんや作品世界を楽しませてくれる作家さんたちが筆を折らずに書き続けることができ、また新たに若い才能も生まれ続けることができますように。
祈りながら、私は今日も本を読みます。



お散歩途中の桜の木。葉がずいぶん落ちました。



ここまでお付き合いくださった方、いつも来てくださる方もありがとうございましたm(_ _)m